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ミトコンドリアを増やす方法とは?運動・食事・成分を解説

ミトコンドリアを増やす方法とは?運動・食事・成分を解説

「ミトコンドリアを増やす」というテーマは、健康食品やSNSでもよく語られますが、実際には「運動・食事・生活習慣」という土台と、「注目されている成分・栄養素」という補助的な要素に分けて考える必要があります。またミトコンドリアは細胞ごとに「数」だけでなく「質(働きの効率)」も重要とする見方が近年広がっています(ミトコンドリアとは?基礎解説はこちら)。この記事では、現時点の研究で報告されている内容を、ヒトでの根拠か動物・細胞実験の段階かを区別しながら整理します。

この記事でわかること

  • 基本の土台: 有酸素運動やインターバル運動、食事・睡眠などの生活習慣が、ミトコンドリアの働きに関わる基本的なアプローチです
  • 運動の仕組み: 運動によって「PGC-1α」という因子が働き、ミトコンドリアを新しく作る反応が促されることがヒトの研究で報告されています
  • 食事・生活習慣: カロリー制限や断食、寒冷刺激なども、主に動物実験でミトコンドリアの代謝に関わる報告がありますが、確立した方法とまでは言えません
  • 成分・栄養素: 5-ALA、Lカルニチン、CoQ10、PQQ、NMN、レスベラトロール、グリシン、ウロリチンAなどが話題になりますが、ヒトでの根拠の強さは成分によって差があります
  • 注意点: どの方法も「必ず増える」「治る」と断定できるものではなく、健康食品は医薬品ではありません
目次

運動でミトコンドリアを増やす仕組み(PGC-1αと有酸素運動)

運動がミトコンドリアを増やす代表的なきっかけになる、という考え方の背景には「PGC-1α」という因子の働きがあります。ヒトを対象にした研究では、一度の持久系運動の後に、骨格筋でPGC-1α遺伝子の働きが一時的に高まることが報告されています(PMID:12563009)。この反応が運動のたびに繰り返されることで、長期的にミトコンドリアが新しく作られる「生合成」につながると考えられています。

対象となる運動の種類は、ジョギングやロードバイクのような持久系の有酸素運動から、高強度のインターバルトレーニングまで幅広く研究されています。ただし、PGC-1αだけがミトコンドリア新生の唯一の経路というわけではなく、別の経路が働く可能性を示すマウスの研究報告もあり(骨格筋特異的にPGC-1αを欠損させたマウスでも運動によるミトコンドリア新生がある程度保たれた、という報告)、メカニズムの全体像は今も研究が続いています。

Q. ロードバイクのような持久系運動は、ミトコンドリアを増やすのに向いていますか?

A. 持久系の有酸素運動は、PGC-1αを介したミトコンドリア新生の経路が刺激されると報告されている運動の一種です。ただし効果には個人差があり、継続が前提になります。

食事・生活習慣でサポートできること(断食・寒冷刺激・体脂肪との関係)

運動以外の生活習慣についても、いくつかの報告があります。カロリー制限や断食は、古くなったミトコンドリアを分解・除去する「マイトファジー」という仕組みを促す可能性が、複数の研究をまとめた文献レビューで指摘されています(PMID:32856431)。ただしこのレビュー自体、対象となった研究の多くが動物実験であり、著者らも「有望だが、副作用なく健康維持に役立つ可能性がある方法」という位置づけにとどめており、ヒトで確立した方法として断定しているわけではありません。

もうひとつ報告が多いのが寒冷刺激です。10日間の軽い寒冷曝露を行った健康な成人を対象にした研究では、褐色脂肪組織(体を温めるために熱を作る脂肪組織)の働きが高まり、震えを伴わない熱産生が増えたことが報告されています(PMID:23867626)。褐色脂肪や、白色脂肪の一部が褐色に近い性質に変化した「ベージュ脂肪」は、通常の白色脂肪細胞に比べてミトコンドリアを豊富に持つことが知られています。この熱産生の際には、脂肪組織にコハク酸という物質が蓄積し、UCP1というタンパク質を介した仕組みが働くことも、マウスや細胞を使った研究で示されています(PMID:30022159)。※こちらはマウス・細胞実験の段階の報告で、ヒトでの効果を断定するものではありません。

なお「生姜がミトコンドリアを増やす」という話題も検索されますが、生姜が体を温める食品として知られていることに由来する文脈と考えられ、生姜そのものがヒトのミトコンドリアを増やすことを直接示した研究は確認できていません(※確認中)。

Q. 寒冷刺激でミトコンドリアが増えるというのは本当ですか?

A. 短期間の寒冷曝露で褐色脂肪の働きが高まったとするヒトの研究はありますが、日常生活でどの程度実践すべきかを断定した基準はありません。無理な寒冷刺激は体調不良につながる可能性もあるため注意が必要です。

注目される成分・栄養素とエビデンスの強さ

「ミトコンドリアを増やす」文脈で語られる成分は数多くありますが、研究の進み具合には大きな差があります。次の表は代表的な成分と、現時点で確認できる研究段階の目安です。

成分想定される関わり研究段階の目安
5-ALA(5-アミノレブリン酸)ヘム合成を介したエネルギー代謝への関与ヒト試験あり(血糖指標が中心。PMID:23759263)
Lカルニチン脂肪酸をミトコンドリア内へ運ぶ「シャトル」の役割生化学的に確立した仕組み。サプリ摂取による上乗せ効果は個人差が大きい
CoQ10(ユビキノン)電子伝達系での電子伝達を担う補酵素スタチン系薬剤使用者でCoQ10が低下するとの報告あり(PMID:17560286)
PQQ(ピロロキノリンキノン)ミトコンドリア関連の代謝マーカーへの影響小規模なヒト試験あり(n=10。PMID:24231099)
NMN・ナイアシン(NAD+前駆体)NAD+を介した代謝調節ヒト試験あり(閉経後の女性、10週間。PMID:33888596)
レスベラトロールSIRT1・PGC-1αを介した経路マウス試験が中心(PMID:17112576)。ヒトでの効果は研究によって結果が一致していない
グリシン+グルタチオン(GlyNAC)加齢に伴うグルタチオン低下・酸化ストレスの是正ヒト試験あり(高齢者対象。PMID:35975308)
ウロリチンAマイトファジー(古いミトコンドリアの除去)の活性化線虫・動物実験が起点(PMID:27400265)。中高年を対象にした4か月のヒト試験で筋力指標の改善も報告(PMID:35584623)
オルニチン疲労感の軽減という報告はあるが、ミトコンドリアとの直接的な関連は示されていないヒト試験あり(疲労指標が中心。PMID:19083482)

表からもわかるように、ウロリチンAとGlyNAC(グリシン+N-アセチルシステイン)は、ヒトを対象にした試験で「ミトコンドリアに関連する指標の変化」が報告されている数少ない例です。一方でレスベラトロールは、マウスでの基礎研究(PMID:17112576)が広く知られていますが、ヒトでの効果は研究間で一致しておらず、過度な期待は禁物です。オルニチンについては、疲労感を軽くしたとする人での研究はあるものの、原論文自体はミトコンドリアを直接のメカニズムとして扱っていない点に注意が必要です(PMID:19083482)。NAMPT(NAD+を作る経路の律速酵素)やSOD(ミトコンドリア内の酸化ストレスを抑える酵素)といった言葉も検索されますが、これらは体内にもともと存在する酵素の名称であり、サプリとして摂取した場合にどこまで同じように働くかは別に検証が必要な話です。含有量や価格を比較しながら製品を検討したい方は「ミトコンドリアサプリおすすめ比較」も参考にしてください。

Q. サプリメントを飲めばミトコンドリアは増えますか?

A. 成分によっては人での試験で代謝関連の指標に変化が見られたとする報告もありますが、「必ず増える」「治る」と断定できる段階のものはありません。健康食品は医薬品ではない点を踏まえたうえで、含有量が明記された製品を目安に検討することが大切です。

「増やす」だけでなく「質」を見る視点(老化・サルコペニアとの関係)

ミトコンドリアを単に「増やせば増やすほど良い」と単純化する見方には、近年見直しが進んでいます。コロンビア大学の研究グループ「Picard Lab」は、ミトコンドリアを「エネルギー産生装置」として量だけで語るのではなく、細胞間の情報伝達やストレス応答にも関わる、より多面的な存在として捉え直す必要があると指摘しています(PMID:37100996)。

この視点は、加齢に伴う筋肉量・筋力の低下(サルコペニア)とミトコンドリアの関係を考えるうえでも重要です。2024年のレビューでは、ミトコンドリアの機能変化はサルコペニアの原因のひとつとして注目される一方、「筋肉のエネルギー需要そのものが低下したことへの適応的な変化」という見方も提示されており、単純に「壊れているから増やせばよい」と言い切れない複雑さがあることが指摘されています(PMID:38304924)。(臨床検査技師の視点)加齢による疲労感や筋力低下が強い場合、自己判断でサプリメントに頼るのではなく、医療機関での相談も選択肢に入れることをおすすめします。

紛らわしいキーワード・文脈の異なる話題について

「ミトコンドリア」というキーワードは、本記事で扱う運動・食事・成分の話題以外の文脈でも検索されることがあります。

たとえば「シルニジピン」は、高血圧の治療に使われる医療用医薬品(カルシウム拮抗薬)の成分名です。心筋梗塞後のマウスを使った研究で、この薬剤がミトコンドリアの過剰な分裂に関わるタンパク質同士の結合を妨げたとする報告はありますが(PMID:30425165)、これは特定の心臓病モデルにおける薬理作用の研究であり、健康な人が「ミトコンドリアを増やす」目的でセルフケアとして使うものではありません。血圧の薬に関する相談は、必ず処方医に行ってください。

また、化粧品・スキンケアの分野で「ミトコンドリア成分配合」をうたう商品を見かけることもありますが、これは美容目的の商品訴求であり、本記事で扱う運動・食事・栄養素によるミトコンドリアの働きのサポートとは、目的も評価軸も異なる文脈です。

まとめ

ミトコンドリアを増やす・支えるという観点では、現時点で最も広く報告されているのは運動(特に持久系の有酸素運動)と、食事・睡眠を含めた生活習慣の基本です。断食や寒冷刺激も研究段階の報告がありますが、多くは動物実験にとどまります。成分・栄養素については、ウロリチンAやGlyNAC(グリシン+N-アセチルシステイン)のように人での試験で一定の指標変化が報告されているものもあれば、レスベラトロールやオルニチンのように、マウスでの知見が先行していたり、ミトコンドリアとの直接的な関連が示されていなかったりするものもあります。いずれの方法・成分についても「必ず増える」という断定はできず、疲労感や体調不良が続く場合は自己判断せず医療機関に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q. ミトコンドリアを増やす一番の方法は何ですか?

A. 現時点で最も広く報告されているのは、持久系の有酸素運動を中心とした運動習慣と、睡眠・食事などの基本的な生活習慣です。サプリメントはあくまで補助的な位置づけとして考えるとよいでしょう。

Q. 5-ALAやNMNはどのくらい効果がありますか?

A. 成分によって研究段階が異なります。5-ALAは血糖関連の指標、NMNは閉経後女性の筋肉のインスリン感受性など、人での試験で特定の指標変化が報告されていますが、いずれも「ミトコンドリアを何倍に増やす」といった効果を保証するものではありません。

Q. ミトコンドリアが多い・元気かどうかを調べる検査はありますか?

A. 細胞内のミトコンドリアの数そのものを日常的な採血で直接測る一般的な検査は普及していません。研究では乳酸・ピルビン酸などエネルギー代謝に関わる指標が参考にされることがあります。詳しくは基礎解説記事をご覧ください。

参考情報

  • Pilegaard H, Saltin B, Neufer PD. Exercise induces transient transcriptional activation of the PGC-1alpha gene in human skeletal muscle. J Physiol. 2003.(PMID:12563009)
  • Mehrabani S, et al. The effect of fasting or calorie restriction on mitophagy induction: a literature review. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2020.(PMID:32856431)
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  • Higashikawa F, et al. 5-aminolevulinic acid, a precursor of heme, reduces both fasting and postprandial glucose levels in mildly hyperglycemic subjects. Nutrition. 2013.(PMID:23759263)
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  • Ryu D, et al. Urolithin A induces mitophagy and prolongs lifespan in C. elegans and increases muscle function in rodents. Nat Med. 2016.(PMID:27400265)
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  • Affourtit C, Carré JE. Mitochondrial involvement in sarcopenia. Acta Physiol (Oxf). 2024.(PMID:38304924)
  • Nishimura A, et al. Hypoxia-induced interaction of filamin with Drp1 causes mitochondrial hyperfission-associated myocardial senescence. Sci Signal. 2018.(PMID:30425165)
  • Picard Lab(コロンビア大学 ミトコンドリア心理生物学研究室)
  • ミトコンドリアとは?簡単にわかる構造・仕組みと働き(当サイト関連記事)
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