がんを血液検査で調べる
がん検査を受けたいけど、内視鏡は痛そうだし、バリウムは辛いから嫌だな。血液検査で出来ないの?どの血液検査を受ければいいの?
こんな疑問に答えます。
健診→治験→病院勤務を経て一転してフリーランスに。医療の現場で15年以上臨床検査技師として働いていました。血液検査やエコー検査もたくさんやりました。エビデンスをもとに検査技師として検査や病気について、専門用語は使わずにわかりやすい記事を書いています。
この記事でわかること
- がんの可能性がわかる血液検査
- 血液検査の限界
- 血液検査の検診の注意点
- おすすめの血液検査
がんの可能性がわかる血液検査
血液検査の特徴とLDHの例
がんのわかる血液検査と言えば、腫瘍マーカーが直ぐに出てきます。もちろんそれであっているのですが、実はLDHという項目でもわかります。
しかし、わかると言えばわかるし、わからないと言えばわからないです。
その説明をさせて下さい。この部分が血液検査でがんを調べるための基本的な考え方になります。
LDHという検査は、病院では一般的に検査されます。腫瘍マーカーよりも検査頻度は圧倒的に高いと思います。
AST、ALT、γGTP、LDHといった感じで検査結果に並んで表示されていることがあります。残念ならが検診の項目に入っていないことは多いです。
こんな感じ普通に検査されているのですが、臓器特異性もがんの特異度は低いです。
このAST、ALTは肝臓や心臓の項目として有名ですが、LDHはとても幅広い検査です。どんなことがわかるというと。
- 悪性疾患末期
- 肝癌
- 胆道癌
- 消化器癌
- 白血病
- 再生不良性貧血(血液のがん)
- 悪性リンパ腫
これらのがんの時に高値を示します。凄い数のがんの時にあがりますよね。これではどのがんにかかっているのかわかりませんよね?
これを特異度が低いと言います。限定された疾患の時に上がる項目は特異度が高いと言います。
更に言えば、この項目以外でもLDHは高値を示します。
・多発性筋炎 ・筋ジストロフィー症 ・急性心筋梗塞 ・肺梗塞 ・急性肝炎 ・薬剤性肝障害 ・溶血性貧血 ・急性腎不全 ・アルコール性肝障害 ・慢性活動性肝炎 ・急性感染症 ・甲状腺機能低下症 ・妊婦
妊婦でも高値になるんです。もう正直高いからなんなの?ってくらい色々な項目で上がります。
なので特異度の低い検査は判断が難しいですし、その検査だけで特定することが困難になります。ですので複数検査を併用して判断することになります。
腫瘍マーカーについて
ではLDHを踏まえて、腫瘍マーカーの話になります。
腫瘍マーカーに関しても問題は特異度です。特異度の高い検査はそれだけでがんの可能性を指摘できますが、低ければ判断に迷います。
腫瘍マーカーも特異度が基本的にはそれほど高くはありません、ですので複数の項目を併用して検査することが一般的です。
しかし、臓器が限定的な検査もあります、PSAは前立腺疾患で高値を示す検査です。でも前立腺がんだけではなく、前立腺肥大でも高値を示します。
なのでPSAで高値を示した場合、精密検査になります。
腫瘍マーカーの前立腺を深堀して検査をしる
前立腺がん検診ガイドラインというものがあり、この中では4.0ng/ml以上で超音波ガイド下での前立腺生検可能な泌尿器科専門医への紹介になっています。
難しい言葉が並びました。前立腺生検とは前立腺に針を刺して、細胞を診るための方法です。
超音波ガイド下は超音波で見ながら前立腺生検をすることです。
ガイドラインではこれらが施設の、泌尿器科専門医でないと精密検査はおすすめしないと言っているわけです。
前立腺生検を出来ないと、精密検査はできないですし、超音波がないと安全に生検が出来ないためこうなっています。更に専門医です。
なぜ専門医なのか
単純に泌尿器科分野であることも挙げられますが、それ以外に総合的な判断が必要になるからです。
先ほどの特異度の話になりますが、PSAは臓器特異性は高いと言いましたが、がんの特異度はそれほど高くありません。30~40%と言われています。
すこし難しい話ですが、我慢出来たら読んで見て下さい。だめなら注意点に飛ばしてもらってもいいです。注意には要約しています。
無作為化比較対象試験
無作為化比較対象試験とは、大規模な臨床試験で、かなりの時間と人とお金を掛けて行われます。
そして国立がんセンターでもこの試験が最上としています。その試験の話です。
アメリカで単純にPSAを高値を示した症例に対して行った無作為化比較対象試験では、76%は前立腺がんが発見されなかった。
そのことにより、free PSA、前立腺体積、直腸診、家族歴などの検査パラメータや所見を組み合わせた判断が求められることになりました。
組み合わせにより、必要のない前立腺生検をなくすことが課題となっています。
この組み合わせ判断が、専門医ではないと出来ないですし経験が必要になる部分となります。なので専門医を進めているわけです。
おすすめの腫瘍マーカー
少し長く書きすぎましたが、腫瘍マーカーの判断は非常に難しいことがお分かりいただけたと思います。難しことだけでもわかって頂ければ幸いです。
上のことを踏まえて、おすすめの腫瘍マーカーのお話になります。
で結局なにを受ければいいの?となっていることと思いますが、幅広く受けることをおすすめします。
まずは拾い上げることです。その結果どうするかはまた別の話です。それは最後の注意に書いてますのでそちらでお話します。
おすすめの腫瘍マーカー
- 前立腺腫瘍マーカー:PSA
腫瘍マーカーではないけどおすすめの血液検査
- ヘリコバクターピロリ抗体
- ペプシノゲン
(胃のリスクABC検査が上記のセット検査)
広く浅く知るための腫瘍マーカー(早期発見ではないが病院に行くきっかけになる)
- AFP
- CEA
- CA19-9
腫瘍マーカーの注意点
腫瘍マーカーは残念ながら、早期発見の検査ではありません。どちらかといえば、経過観察の検査になります。
治療効果の判定がメインです。放射線治療、手術、化学療法これらの効果の判定に用いることが目的の検査です。
しかし、私はもし体調がすぐれず病院にも行っていないのであれば、拾い上げの意味での検査は有用と考えています。
もう一つの注意点としては、この検査が陰性だったからといってがんの否定はできません。
逆に陽性だからといって、がんと確定できません。
この2点は腫瘍マーカーの特徴であり、猛烈なデメリットです。PSAで説明しましたが、取り越し苦労の可能性があります。
これらの事を理解して受けるのであれば、有効な検査だと言えると思います。なのでおすすめの検査は少ないです。
まとめ
この検査を受ければ、安心という検査はありません。どの検査もメリットデメリット、弱点、強味があるのでそれらをカバーして検査を受ける必要があります。
しかしそれらを判断するのは、一般の方には非常にハードルが高いので、なるべくわかりやすく説明したつもりですがどうだったでしょう。
まずは血液検査からではなく、市区町村でで進めている検診項目を受けることが第1選択です。
そしてお金にゆとりがあり、注意事項を理解いただけたならおすすめの検査も受けるのも選択肢だと思います。